1.2026年6月の地震活動
気象庁が公開しているCMT解によると,2026年6月の地震個数と総地震断層面積のPlate運動面積に対する比(速報36,2013年1月)は,日本全域で56個1.460月分,千島海溝域で0個,日本海溝域で46個10.485月分,伊豆・小笠原海溝域で0個,南海・琉球海溝域で10個0.045月分であった(2026年6月日本全図月別).
2026年6月の総地震断層面積規模はΣM7.2で,最大地震は2026年6月25日の襟裳小円区の東北前弧沖久慈ofAcJKjij震源区M6.8ps/53kmで,他にM6.0以上の地震なかった.
最大地震の最大震度は6強で震度1以上が能登半島から伊勢湾の中部地方にまで及んでいる(図671).仙台湾から釧路との間に震度4以上が分布しており,日本海溝軸輪郭の太平洋側への突出によるSlab裂開との関連が伺われる.

図671.東北前弧沖久慈ofAcJKj震源区の2026年6月25日M6.8ps/53kmの震度分布(気象庁HPより).
2026年6月までの日本全域2年間のCMT解は399個で,その総地震断層面積規模ΣM8.9はPlate運動面積規模M8.2に対して5.384倍と大幅に超過している(図672の中図上).日本全域と千島海溝域のBenioff曲線(図672右図上左端Total/4と右端Chishima[A])は2025年7月30日M8.8の巨大な段差に隠され他の段は見え難いが,伊豆海溝域OgsIzでは,2024年7月8日WdtiGPcPlM6.2-trの最初の段・2024年末から2015年始の段・2026年始の緩い段が認められる.琉球南海域(図668右図上左端の右側のRykNnk[D])には,伊豆海溝域とほぼ同期したBenioff曲線が2024年8月8日TrPhKysM7.0psの段から認められる.千島海溝域は,2025年に入り完全無CMTを保っていたが(図672右下地震断層面積移動平均規模areaM図右端A),5月31日に5月最大地震oAcCKsrM6.1Ps,6月22日にも6月最大地震oAcCNmrM6.0Psが続き半年ぶりに活性化し,2025年7月30日oAcCKamcM8.8・9月19日oAcCKamM7.8psが続いたが歪軸方位に変化がなく,千島海溝域の歪の完全解放に至っていない(月刊地震予報193,2025年9月).その活動は,静穏化の続いていた日本海溝域[B]に移り,2025年12月8日の最大地震東北前弧沖下北震源区ofAcJSmkM7.4psに続きその東方の深度の浅い東北弧沖襟裳南震源区oAcJEsで12月9日M6.0Ps・M6.5Ps・12月12日M6.8psと東北弧沖久慈震源区oAcJKj12月31日M6.0Psが起こり(月刊地震予報196,2026年1月),2026年に入り千島海溝域の択捉沖で1月最大地震があったが,2026年2月以降CMT解の殆ど無い静穏期に入っていたが6月25日に東北前弧沖久慈ofAcJKj震源区でM6.8が再発した.

図672 .2026年6月までの日本全域2年間CMT解.
(地震活動図解説参照)
2.東北前弧沖久慈ofAcJKj震源区の地震活動.
2026年6月の最大CMT M6.8ps/53kmが25日に襟裳小円区方位286.0°の海溝距離・深度[Slab深度]175/53[+17]km東北前弧沖久慈ofAcJKj震源区で発生した(図673).この地震の初動解の方位は284.5°海溝距離・深度は173/44[+9]kmで規模・発震機構はM7.2psである(図674).

図673.東北前弧沖久慈震源区のCMT解88個.
左図:縦断面図は襟裳小円区のみを拡大表示.
上中図海溝距離断面areaM図・上右図縦断面図の赤色下矢印と英数値は2026年6月最大地震:Eri286.0=175/53[+17]km M6.8psと震源区最大地震の発生年月日と規模発震機構

図674.東北前弧沖久慈震源区のIM解402個.
左図:縦断面図は襟裳小円区のみを拡大表示.
上中図海溝距離断面areaM図・上右図縦断面図の赤色下矢印と英数値は2026年6月最大地震:Eri284.5=173/44[+9]km M7.2ps
ofAcJKj震源区は,前弧沖ofAc震源列に属する東北前弧沖ofAcJ震源帯(解説12.震源帯)の北部に位置しており,襟裳小円区方位角272-288・海溝距離140-250kmの範囲に設定されている(図675=解説13震源区解説13.震源区).
東北前弧沖ofAcJ震源帯の発震機構は9割以上が逆断層型である.今回の発震機構も逆断層型であるがその主圧縮P歪軸傾斜がPlate運動と逆方位である(Benioff図の赤色).本震源帯全体でも逆方位が8割を占めている.の地震の圧縮P軸傾斜が海溝側傾斜であることは剪断力による破壊であることを示し,島弧Mantleが同心円状屈曲Slab上面と接触して引摺られるとその接触面に直交する摩擦抗力が働くため起こった地震活動である.
太平洋Slabを日本海溝に沿って同心円状屈曲して沈込ませているのは,東北日本弧殻とMantleであるが,島弧地殻・Mantleの強度は深度とともに上昇する温度のため減少する.地殻は石英を主体とする上部地殻と長石を主体とする下部地殻に区分されるが,下部地殻は上部地殻より高温でも強度が大きく,下部地殻の中でも温度の低い上面は強度が極大になる.橄欖石を主体とするMantleはさらに高温でも強度が大きく,Mantle上面のMoho面付近で極大になる.ofAcJKj震源区は,東北日本弧Moho面直下の強度極大部が太平洋Slabに接触して同心円状屈曲させている現場なのである.

図675.東北前弧沖震源帯の震源区
ofAcJKj震源区のCMT解はこれまで88個あり,M6.0以上は4個ある.Slab上面からの深度は-12/+27kmの範囲にあり,2026年6月25日のM6.8psは深度53kmでSlab深度[+17]kmでSlab上面下17㎞のSlab上部剪断破壊である.
最大のCMT解は1995年1月7日M6.9+ps/45[+11]kmである.今回の地震M6.8psは,1995年1月7日M6.9+psに次ぎ2番目に大きい.今回の震央は震源域の北端に位置し,最大地震M6.9+psの震央は,震源域中央の海溝寄に位置する.
最大地震M6.9+psの発震機構(P101+24T315+62N197+14)を基準にすると今回の地震(P103+19T318+67N198+12)の応力場偏角はorg=5.5°とほぼ一致している.久慈沖震源域のCMT解61個の全てが基準区分orgに入り,59個の応力場偏角が25°以内であることは,極めて安定な歪場を保持している.
CMT解は,1995年1月7日M7.2+p(org=15.6)の後途絶え,2004年8月10日M5.8p(org=18.5)から活動を開始し,東日本大震災後の2011年に活動が最大になった後,2012年・2015-2016年に活動が低下したが,2016年から活発化して今回の地震に到っている.初動発震機構解は1997年12月23日M5.2p(org=25.0)から活動を連続的しているが,活動の盛衰はCMT解と類似している.
久慈沖震源域の歴史地震は,1772年から1974年にM5.6からM7.0の6個があり,その最大は1928年5月27日M7.0で,CMT解最大の2011年3月11日M7.4Pより小さい(表25;図248右下端;宇佐美,2003).久慈沖震源域最大の地震が東日本大震災本震当日誘発地震であることは,東日本大震災本震域と同様にこの久慈沖震源域も数百年に及ぶスラブ固着域であったことを示唆する.東日本大震災に誘発されて固着を解消したが,今回の地震はその北端で起こっており,未だ固着を解消していない北側の歪集中が限界に達しつつある兆候であるとも考えられるので警戒が必要である.
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