8.Benioff曲線

 間欠的に起こる地震を定量的に記述する方法として地震の規模Mから算出される地震断層面積Sfを本速報では使用している(速報36,2013年1月).

 地震断層面積Sf(km2)は,地震の規模Mと地震断層の長さLおよび断層のずれDについての経験式(松田,1975)を乗じて算出される.

              S=L*D= 101.2M-9.9

 この式は,規模Mの地震16個(≒101.2)の総地震断層面積が規模M+1の地震1個の地震断層面積と等しいことを示している.

 同じ規模の地震が等時間間隔に起これば,総地震断層面積は時間とともに増加する.横軸に総地震断層面積,縦軸に時間のgraphを描くと,右上に登る階段状のgraphが得られる.

 この階段状のgraphは,火山噴出物の累積量(Nakamura,1964)や活断層の累積変位量に用いられているが,最初に地震へ導入したBenioff(1954)への中村一明(1932-1978)の高い評価に因み「Benioff図」と呼ぶことにする.活断層や地震の場合には,歪みが時間とともに蓄積し,破壊限界に達して断層の変位とともに地震が発生する様子を定量的に示すことができる.火山噴出物の場合には地下に蓄積するmagmaが限界に達し,地上に噴出する様子を表す.歪やmagmaの蓄積速度が一定であれば,階段全体の傾斜が等しくなり,蓄積に変化が起これば傾斜が変化する.破壊強度が大きいと破壊限界に達する時間間隔は長く,階段の幅が広くなり,大きな破壊が起これば断層面積も大きく階段の高さが高くなる.

 作図に当たっては解像度を考慮し,解析期間を250等分し,その等分区間内に起こった地震の総地震断層面積を算出し,その総地震断層面積を時間とともに順次積算した点を結びBenioff曲線とする

 Plateの相対運動が歪蓄積の主要原因と考えられるので,Plate相対運動面積と総地震断層面積を比較する.日本列島に関係するPlate相対運動のEuler回転は(新妻,2007),

                            Euler極

   Plate         北緯       東経       回転角   Plate境界

              NA-PC  48.7       -78.2      0.79       千島海溝,日本海溝

              PC-PH  1.2         134.2     1.00       伊豆海溝,小笠原海溝,Mariana海溝

              NA-PH  44.4       160.5     0.88       相模Trough

              AM-PH 51.4       162.4     1.08       駿河Trough,南海Trough

              PH-SC   -50.3      -24.9      1.28       琉球海溝,台湾

ここで,NA北米Plate,PC太平洋Plate,PH Phillippine海Plate,AM Amur Plate,SC南華Plateである.

 Plate境界1(北緯φ,東経λ)のEuler極(北緯φE,東経λE)に対するEuler緯度φ1は,

              sin φ1 = sin φsinφE + cos φcos φE cos (λ- λE)

と算出できる.

  Plate境界におけるPlate相対運動速度V(㎜/年)は,Euler緯度φ1の余弦にEuler回転角速度r(度/百万年)を乗じて算出される.

              V = 111 r cosφ1

ここで,111は単位を合わせるための係数.

 Plate境界のEuler緯度範囲をφ1からφ2とすると,Plate相対運動面積Sp(km2/年)は,Plate相対運動速度Vをφ1からφ2まで積分し,

              Sp = k r ∫φ1φ2cos φdφ= 0.7074 r [ sin φ]φ1φ2 = 0.7074 r (sin φ1 – sinφ2) 

と算出できる.ここで0.7074は単位を合わせるための係数.

 日本全域のPlate相対運動面積は,0.4643km2/年と算出され,毎年M8.0の地震1個あるいはM7.0の地震16個が起こるか,毎日M5.8の地震が日本列島のどこかで起こることに相当する.

 日本全域のPlate相対運動面積は関係PlateとそのEuler緯度範囲によって海溝域毎に算出でき,Plate運動が一定ならPlate相対運動面積Spは時間とともに増加する.横軸に解析期間のPlate相対運動面積と総地震断層面積,縦軸に時間を取るBenioff図を作成すると,Plate相対運動面積は右上がりの斜線になる.

Benioff図はareaM図(解説 7)と対にして海溝距離断面図(解説 2)・縦断面図(解説3)の深度断面と縦断距離断面に付けてある.Benioff曲線は一様に増大するがそれを構成する発震機構(解説 14)に従って線形内分して段彩している.断彩は下から,灰色:不明?・橙色:座屈逆断層型pb・赤色:剪断逆断層ps型・緑色:横擦断層np/nt型・暗灰色:正断層t型)である(解説 4:時系列図下縁左端).

解説 8-1図.Benioff曲線.Click拡大

 左上図:海溝距離断面図のBenioff図.横軸は海溝距離.

 左中図:縦断面図の縦断距離断面図のBenioff図.横軸は縦断距離.

 左下図:「Plate運動Euler緯線」の縦断面図の縦断距離断面図のBenioff図.横軸は縦断距離.

 右上図:縦断面図の深度断面のBenioff図.縦軸は深度.

 右下図:時系列図のBenioff図.上縁の「4.260F」はこの期間の総地震断層面積ΣM9.1がPlate運動面積M8.6の4.260倍あり,Benioff曲線の上端がBenioff図枠の右上端に届くように作図していることを意味している.

  1. 2) 3)はBenioff曲線の段に付けた番号.

コメントを残す

niitsumageolab.dev 月刊地震予報:新妻信明公式HomePageをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む