新妻地質学研究所速報36(2013年1月10日発行)
地震の個数は,マグニチュードMが小さいほど多い.地震の総個数は,Mが0.5小さくなるとほぼ倍増する.1995年の阪神大震災を契機に整備充実された地震観測網によって,気象庁は2010年7月からCMT解公表の下限をM5.0からM4.5へ引き下げ,より多くの地震のCMT解が公表されるようになった.従って,CMT解の個数のみから地震活動の程度を比較することはできない.
地下の岩石が破壊して断層に沿って変位する際に発する震動が地震であり,地震のマグニチュードMから地震断層の長さと変位量が算出できる.これらを掛け合わせることによって地震断層で変位した地震断層の面積Sf(km2)は
Sf = 10 1.2M-9.9
と算出することができる.地震断層面積はマグニチュードが0.5減ずると4分の1に減少するので,全ての地震の総地震断層面積は,取り扱う地震のマグニチュード範囲の影響を余り受けず,過去の地震活動との比較に役立つ(速報9,2011年5月:歴史地震とプレート沈み込み).
太平洋プレートは,北緯48.7°西経78.2°のオイラー極を中心に北米プレートの下に百万年にα= 0.79°の回転速度で沈み込んでいる(新妻,2008).北緯41.9°東経146.6°から北緯34.5°東経142.0°の日本海溝に沿って,1年間に太平洋プレートが沈み込む面積S(km2)は,日本海溝両端のオイラー緯度eφ=8.8°と0.6°から,
S = 0.7074 α(sin eφ1 – sin eφ2 )
0.796km2と算出される.この沈み込み面積と同じ地震面積の地震が毎年1回起こるとすると,その地震のマグニチュードMは,
M= ( log S + 9.9 )/ 1.2
M7.3である.この面積は毎月M6.4の地震が起こった場合の地震面積とも等しい.このように地震面積の使用によって,地震活動とプレート運動を直接比較出来る.
2012年の日本全域におけるプレート相対運動面積に対する地震面積の比は0.893で,プレート相対運動面積の9割に相当する地震が起こっている.日本海溝域では2.72年分の地震活動があり,東日本巨大地震の影響が続いていることを示している.この活動は,宮城県沖地震のあった2003年の8.35年分と八戸沖地震のあった1994年の6.58年分に次ぐ活動である.
2012年12月のCMT震源52個は本年最多を記録したが,地震面積も16.3月分で,東日本巨大地震後の2011年8月の20.6月分(57個)に次ぐ地震活動であった.前月の2012年11月は東日本巨大地震前の2011年1月と同じ15個のCMT震源個数であったが,地震面積も0.4月分に減少し,嵐の前の静けさのようであった.
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